大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和40年(う)656号 判決

主文

原判決を破棄する。

被告人を罰金四〇、〇〇〇円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金四〇〇円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。但し、本裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶予する。

被告人に対し、この裁判が確定した日から刑の執行を受けることがなくなるまでの間選挙権および被選挙権を有しない旨の公職選挙法第二五二条第一項の規定を適用しない。

原審および当審の訴訟費用は全部被告人の負担とする。

理由

所論は、公職選挙法第一九九条の五は、衆議院議員の総選挙にあつては、後援団体からの買収餐応接待等の実質犯ですら衆議院議員の任期満了の前九〇日に当たる日から当該総選挙の期日までの間または衆議院の解散の日の翌日から当該総選挙の期日までの間禁止するにとどまるのであるから、山梨県教職員組合内部における本件解散の十数日前に行なわれた本件文書頒布のような形式犯については犯罪が成立しないと主張するけれども、右公職選挙法第一九九条の五の規定は、もともと、政党その他の政治団体又はその支部で、その政治活動のうち、特定の選挙の候補者若しくは公職の候補者となろうとする者(公職にある者を含む。)の政治上の主義若しくは政治上の施策を支持し、又は特定の候補者若しくは公職の候補者となろうとする者(公職にある者を含む。)を推薦し、若しくは支持することを主とするいわゆる後援団体の政治活動を規制したに過ぎないものであつて、その政治活動は、本来いわゆる選挙運動には当らないが、いわゆる選挙運動とまぎらわしいものがあるところから、特に選挙の公正を害するおそれがあると認められる寄附、餐応接待等を、選挙の期日までの一定期間にかぎり禁止したものであつて、本件のような選挙運動そのものについては、その適用がないと解するのが相当であるから公職選挙法の条文の誤解を前提とする右主張は採用できない。(河本文夫 清水春三 西村法)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例